「米中貿易戦争の行方」津上俊哉著(「公研」11月)

世界中の人が、わが身に被害が出ると思って真剣に見ているのが米中貿易戦争だ。日本のこの10連休でも、何が起こるか知りたくなる。

9月にワシントンD.C.に滞在した現代中国研究家・津上氏が「米中貿易戦争の行方」を解説してくれた。(電力会社を中心にした研究書「公研」2018年11月号の30ページ。)現時点でも、十分あてはまる。下記では、左端に > の文で、私の感想をいれた。尚、津上俊哉さんは、「米中新冷戦 三重苦に悩む中国経済」など、今、大切なことをいくつか説明してくれている。

〇米中貿易戦争の背景
・米国は、いま反中一色になっている。

・中国が掲げる「中国製造2025」は、80年代に日本がした工業へのターゲティング政策に似ているが、90年代に日本がターゲッティング政策をやめた後には、似ていない。さらに、中国は、2035年に米国をGDPで凌駕し、2050年に軍事力とソフトパワーの総合力で追いつくのを目標にした。この政策に対して、醒めた中国人は、中国共産党が統治のレジティマシーを目指すものだと、受け止めている。
>この一行の内容が、強烈!

・中国は、この米中貿易戦争で降参しない。中国の歴史上、対金対応する南宋にせよ、対日戦争にせよ、徹底抗戦派が宥和派を叩きつぶす。だから、習近平にとって、折り合い・宥和は、自殺行為になってしまう。
とはいえ、アメリカと徹底抗戦しても、損害の非対称を解消する道がない。そこで、国務院の白書は、激しい言葉にまぜて、「外国企業の合法権益は必ず護る」とも書いて、外国企業を痛めつけないように示している。
>この津上さんの見方は、少数派かもしれないけれど、だからこそ意味深い。

・米国での、「中国に対してはタフに当たる」人には、次の異なる3派がいる。
-冷戦派:アメリカの覇権に挑戦するやつは許さない。
-自由貿易体制派:中国が自由貿易を歪めるのを、止める。
-反自由貿易体制派:貿易赤字は悪である。トランプ政権が近い。
 サンダースのような民主党リベラル左派も、貿易に関しては、トランプに親和性が高い。
>3派ともバラバラですよね。中国に強く当たることだけは一致しているものの。
そういえば、90年代の日米貿易議論の時も、米国には、いろんな意見があって、どこに進むのか分かりにくかったものです。

・米中が、全面的な貿易戦争に長期化するリスクがある。また、WTOが米国のルール違反を裁定すると、トランプがWTOに「脱退するぞ」とスレット(脅し)をかけるかもしれない。

〇米中ハイテク冷戦
・米中は本当に冷戦になりつつある。
・日本は米中双方に物申していくべき 
・TPP11、EPA(日欧経済連携協定)、RCEP(東アジア包括経済連携)で自由貿易を保全するのが重要。 

〇中国に存在する二つの経済
・中国の「一帯一路」は、次の二つある。
-トラディショナル一帯一路:道路、港湾等のインフラ。今、中国は、慎重になっている。
-デジタル一帯一路:アリババ、テンセントの民営中心で調子良い。
         データを個人できちんと管理する仕組みを考えるべき

・中国には、二つの経済が同居している。
-ニューエコノミー:民営中心で輝かしく進んでいる。日本より進んでいる。
-オールドエコノミー:国有企業、地方政府中心で公共投資の禁断症状で苦しんでいる。

・世界中で、グローバリゼーションが逆流し、国境の障壁が再構築される可能性が高い。 
>ひょえー

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