反国家分裂法の意味

今年3月に中国で制定された反国家分裂法は、制定された当時、欧米でも対台湾強硬路線と捉えられ、評判が悪く、胡体制の外交の稚拙さではないかとさえ思われた。しかし、今振り返ると、実は、巧妙で且つまっとうな外交であったようにも見える。

反国家分裂法は、第8条で、もし台湾独立分子が台湾を中国から分裂させる重大な事態になれば、非平和的手段を取ることもあると警告している。台湾にあからさまな圧力を加えるこの法律は、台湾はもちろんアメリカやヨーロッパ諸国にも反発をかってしまった。

ただ、一部の中国分析の専門家の間では、この法律は、胡体制が、江沢民の対台湾強硬路線を変更し、やや軟化させようとしたものだという少数意見もあった。その意見を、僕は、今年3月28日に、次のように紹介している。(ココ

現指導部は、実は、江沢民時代の台湾に対する強硬路線を軌道修正しようとして、この法律の制定に動き出したという説がある。特に、江沢民時代の2000年の2月、台湾の総統選挙の直前に、中国政府が新たに打ち出した、「台湾が無期限に統一交渉を拒めば武力行使」という強硬路線を消そうとした。確かにこれがある限り、中国の現政権にとっては、「台湾統一への動きが遅い。弱腰だ。」という批判の芽を常に国内の政治で抱えることになる。サッカーの日本戦のような勢いで国内の批判が現政権に向いたりしたらたまらないだろう。

つまり、江路線は、「現状維持が続けば戦争」だったが、胡体制は、「台湾が独立に動いたら戦争」とし、現状維持が続くことが即戦争を意味しないように変更した。この意味で、軟化したともいえるし、まだ平和主義的だといえるだろう。

その後、中国は、パンダの贈呈を準備するなど色々な微笑外交を台湾にして、台湾独立色の強い陳政権の支持率を低下させるのに成功している。今振り返っても、胡体制は、結局、台湾に対して、江沢民の強行一本やりではなく、硬軟織り交ぜて働きかけようとしているのがはっきりしてきた。そして、結果でみてもこの微笑外交は、明らかに成果があがっている。

こうしてみると、当時「なんて馬鹿なことをするのだろう」と思いかけた中国の外交が、かなりよく考えられており、しかもその構想を着実に実行に移しているのが分かる。中国外交を4千年の歴史があるからといって過剰に警戒するのも考えものだ。しかし、今回の例でも分かるように、次の二つの過小評価も危険だと思う。一つは、海外世論に対してセンスがなく稚拙なものだとすること。もう一つは、国内政治の権力闘争が激しく、混乱しているから無力だと決めてかかること。それは、先の戦争で日本が大失敗した中国認識と全く同じだ。蛇足すれば、これこそが歴史に学ぶということかもしれない。

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