カメの優勝

祝世界一!日本がWBCで優勝した。めでたい。ビル・エモットの「日はまた昇る」では、ゆっくり着実に歩むカメ(日本)が、足の速いウサギ(中国)に勝つと書かれているが、今回の日本代表の野球チームの優勝は、まさにカメの歩みの勝利で、日本の危機克服の特徴をよく示している。

日本が国家的試練を乗り越える時、歴史的にみると、1853年→1868年、1931年→1945年、1990年→2005年と、15年もかかっている。(ココ)こんなに解決が遅れるのは、危機の初期において、失敗の認識が甘く、遅いからだろう。今回の不況でも、バブル崩壊後の金融緩和に遅れたし、銀行の不良債権問題の正確な把握にも遅れた。危機の深刻さを初期によく理解できず、自分の実力を過信して対応するのは、ミッドウェー海戦でも見られる日本の悪い癖である。日本は、正確な危機の認識を共有するのに、人一倍時間がかかるようである。

WBCでも、韓国などは、十分な準備をしてきたのに、日本は、なんとなくふわふわと選手が集まってきた。予選前のチーム結成時には、明らかにまだ体の出来上がっていない、いわばおとそ気分の選手も多く、チームとしてのまとまりもなかった。それでも、松井や城島はかなわなかったが、イチローも含めてそこそこのメンバーがそろったし、漠然となんとかなるような気持ちではなかったか。日本での予選でコールド勝ちが続いたあたりでは、大げさにいえば、ミッドウェー海戦前のようなあやしい楽観ムードが漂った。

それが、韓国に負けたあたりから、危機感の共有が始まる。日本の社会が危機感を共有するには、奇人とも思われるリーダーの言葉が利くようである。イチローの「戦った相手が“向こう30年は日本に手は出せないな”という感じで勝ちたいと思う」という威勢のいい言葉は、小泉氏の「自民党をぶっつぶせ」に通じるものがある。負けたときに「野球人生最大の屈辱」と悔しがったのは、文脈上は「改革なくして成長なし」と同じ意味だろう。

日本の社会は、一旦、危機の正確な認識が共有できると、全員の献身的な努力で着実に問題を解決し始める。監督は、先発オーダーを固定した横綱相撲をあきらめ、冷徹に調子のよい選手を起用し、機動力を使い始める。スタープレーヤーが、チームプレーを率先して実行する。両サイドで一貫しない変なストライクゾーンと品質の悪いボールにも工夫を重ねて対応する。結局、一勝二敗と勝負強いわけでもないのに、中堅の層の厚さにものをいわして失点率をおさえ、しぶとく生き残った。これは、日本社会の復活のときにみるおなじみの光景だ。

ついでにいうとアメリカへの対応にも、どこかでみた風景を感じる。アメリカは、自分の都合のいいルールを「フェア」だとして、みんなに強いる。そして、判定をするのは、自分たちであり、その判定は、ときに明白なえこひいきがある。日本の社会も随分このアメリカの強引なルールに痛い目にあってきた。半導体紛争でも自動車摩擦でもFSXでも、理不尽な要求をフェアという名のもとにのまされて歯ぎしりしたものである。しかし、その理不尽なルールと審判に煮え湯をのまされつつも、打たれ強く頑張り、結局、気がついてみると、そのルールのもとで、アメリカも脱落しているのに、日本が生き残っている。そればかりか、アメリカが中米のチームとなるたけあたらないようにした変な制度のおかげで、日本は、優勝までしてしまった。

そうして、日本の社会では、訳知り顔のこういう後講釈が、たくさん世に出てくるのである。

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  • WBC 日本優勝

    Excerpt: 強豪キューバに10対6で勝って、ついに日本チームが世界の頂点に立ちましたね。素晴らしい試合でしたね。 Weblog: カチャーシー racked: 2006-03-22 08:14