にいさん

御茶ノ水のスキーショップでウェアを買ったところ、イケ面のパリッとした店員が、客のことを、「にいさん」と呼ぶので驚いた。「にいさん。そのウェア、人気っすよ。さっきも、別のにいさんがLを買っていきましたよ。」

今年2月に日本に戻った当初、「ダメっすよ」の「っすよ」、「ハンバーグセットでよろしかったですか」の「よろしかったですか」には、違和感があったが、もう慣れてきた。「無理っすよ」なんて、上司の指示を軽くかわすのに便利なので、時には自分でも使うこともある。そうはいっても、「にいさん」「にいさん」と赤の他人に呼ばれては、気持ち悪さがぬぐいきれない。おれは、別にあんたを弟分にした覚えはないけれど、と、毒つきたくもなる。

日本語が正しい正しくないのせんない議論はここらでとめおいて、好奇心をもってこうした現象を観察するほうが楽しいともいえる。この手の新種の日本語が使われだしてから、サラリーマンの仕事の場面に浸透するには、どれくらい時間がかかるのか、どういう経路で浸透していくのかというのは、興味深い。

7,8年前だろうか、「うちの会社的には、」と話す取引先の年配の部長がおられて驚いたことがある。その頃は、この「的には」というのは、僕的には、とても違和感があって使えなかった。しかし、その部長さんが話されたのを聞いたときは、違和感というよりも、お年のわりにお気持ちの若いことへの好感の方が強かった。ちょうど、「的には」の普及期だったのだろう。今となっては、僕より年配の固い業界の方も、普通に仕事の場面で使っている。

最近、耳につくのは、「い」のない形容詞だ。「ハヤッ」(はやい)、「デカッ」(でかい)、「スゴッ」(すごい)というのは、テレビのバラエティ番組にでてくる字幕の表現の影響だろうか。だんだん単語の字数が減って短くなっていくのは、興味深い。そういえば、東北弁は、寒いのでできるだけ口をあけないように言葉が短いのだと聞いたことがある。例えば、同居人同士の会話では、
「どさ」(どこに行くの?)
「ゆさ」(お風呂に行く)
という、最短の4文字会話がある。現代の若者の言葉もこの域に近づいているのかもしれない。「どさ」なんて、キーの押しにくい携帯電話のメールで使えそうだ。話がそれてしまった。

普及にかかる時間でいうと、「的」などは、使われだしてからもはや20年くらいたっているかもしれない。「よろしかったですか」は、まだ5年もたっていないだろう。そのせいか、僕は、仕事の場面で「よろしかったですか」には、あまり遭遇しない。もう5年くらいはかかるのだろうか。

普及の経路についていうと、上に挙げた「よろしかったですか」や「にいさん」の例などからみるに、若者の仲間内の言葉→飲み屋の店員→他の小売業の店員→サラリーマン社会という経路で普及するのだろうか。考え出すと興味はつきない。

さて、仕事で取引先の方が、僕のことを「にいさん」と呼ぶのは、何年後だろうか。そのときに「じいさん」になってなければよいのだが。

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