「鈴木さんにも分かるネットの未来」川上量生 岩波新書

今のネットを、ビジネスの現場の感覚で、広範且つ本質的にとらえています。完全に分かっているからこそ分かりやすく説明できるお手本です。読み終わってから一週間くらいたちますが、まだこの本の強い影響下から抜け出られません。ネット、メディア、そして、あらゆるB2Cの新規ビジネスに関わる人の必読書といっていいかもしれません。

強く印象に残ったことを、僕の解釈も含めて書いておきます。(青字は、そのままの引用です)

○ 「ネットは、ただでフラットでオープンに向かう」という「信仰」は、もう終わった。
IBMPCとマイクロソフトからGoogleへとどんどんオープンに向かっていった。しかし、Facebook、Appleあたりから、反転してどんどんクローズドでフラットじゃない方向に進んでいる。

○ コンテンツのプラットフォーム化
僕は、ここが一番面白かったです。

・パッケージコンテンツの未来はない
CDやDVDや書籍のように、一度パッケージ化すると後は変えずに複製して売るようなコンテンツには、未来がない。アマゾンやiTunesなどのような巨大流通プラットフォームが大きな利益をとってしまう上に、クリエイターと消費者との接点を無くしてしまう。それに、違法コピーがなくならない。そうしてコンテンツクリエイターが儲からず、育たなくなる。

・コンテンツが動的なものに変化する。違法コピーに対抗するには、パッケージ化して固定化せずに、聞くたび見るたびに変わっていくようなコンテンツが強い。音楽のライブとかがそう。アニメが、テレビ放映時からDVDパッケージにするときに微妙に変えているように。

・コピーしたデータではなく、コンテンツをコピーするサービスに対してお金を払うようになる。音楽データを購入して所有するよりもストリーミングで使うことにお金を払う。

・コンテンツそのものではなく、クリエイターとのコミュニケーションにお金を払うようになる。

・クリエイターがコミュニケーションできない場合には、編集者あるいはプロデューサーがファンとのコミュニケーションを代行するような分業が進む。

・コンテンツ側は、複数のプラットフォームを使い分け、収益は自分たちでつくったファンクラブ型の独自プラットフォームであげるようになる。

・コンテンツの定額使い放題モデルにはパッケージコンテンツ市場の崩壊とともに新しいコンテンツが集まらなくなり、サービス事業者は自分たちでコンテンツをつくりはじめる。

そして、一つの行き着く先として次のような可能性も示しています。
・ネット時代にはネット版のファンクラブをつくって会員限定のサービスをすればいいのです。ネットを通じてコンテンツ側がファンクラブの顧客情報をサーバに保存して、会員限定のサービスを提供する。そしてこのファンクラブの会費は有料にする。こういったモデルをつくることに成功すれば、コンテンツ側はプラットフォームに依存せずに安定した収益モデルをつくれるようになるのです。

○ 書籍とテレビ
書籍については、リアルの本屋は残念ながらなくなる。テレビについては、テレビ放送は残るだろうし、テレビ局も残るだろう。テレビ局としては、むやみにチャンネルを増やさない方がいい。

○集合知とUGC(User Generated Contents)
・集合知の特徴を述べると「頭が悪い」「遅い」「頑固」なのです。
・従来はコンテンツだとは意識されてこなかった、ユーザーのさまざまな活動を、インターネットを使ってうまく組織化して経済効果を生み出すようにしたもの、それこそがUGCの本質。ネットで発表される音楽や小説の作品がUGCの本質ではない。

以上の他に、国家とネット、ビットコイン、リアルとネットといった今のネットの世界の主要な論点を正面から取り上げています。

いやあ、面白かったです。

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