「進撃の巨人」(諫山創)の三分講座

原作コミックが2300万部売れた大ブームの「進撃の巨人」(現在11巻まで、未完)。4月から始まったアニメもこのクールは一旦終わりました。来年にでも再開されるでしょう。大人気とは聞いたことがあるが、マンガを読む気にもなれないという読者むけに、ネタバレも含めて簡単な設定の紹介とコメントをしてみます。韓国、香港で大ブームというのも分かるような気がするストーリーです。

架空の世界の設定ですが、世界観としては、産業革命前の中世のヨーロッパ的世界です。馬で移動し、飛行機はありません。人類が繁栄していた時に、突如、理由なく人を食べる巨人が多数現れ、人類滅亡の危機になります。巨人は、3m~50mで、知性はなく、人間とコミュニケーションもできません。そこで、人類は、高さ50m、総延長3200kmの城壁で囲まれた都市の内側に数十万人だけ引きこもるように住んでいます。壁の外にでると、巨人に食われてしまいます。ダーク・ファンタジーっぽいですが、魔法などはでてきません。

巨人は、喜怒哀楽のうちのどれか一つの表情を常にしており、呆けたようにみえます。その呆けたような巨人が、表情を変えずに人をむしゃむしゃと食べるのが、ほんとうに怖い。アニメでは、巨人が主人公の母親をむしゃむしゃ食べる衝撃のシーンがいきなり第一話にでてきます。深夜でしか放映されなかったのもわかります。作者は、ネットカフェでアルバイトをしていたときに、何を考えているのか分からない乱暴な人が一番怖いと感じたと語っています。確かにそうですね。国の外交でもそうかもしれません。

ところで、最初にコミックを見たときは、新人らしく絵が下手なんですが、巨人の絵が下手である故にわけのわからないものにみえて、よけいに怖さが増している感じがしました。自分の絵の下手さを逆に利用するなんて、なんて巧妙な作者だろうと感嘆しました。だから、アニメ化されると聞いて、絵が上手になってしまうと怖さがなくなるのではないかと心配しました。ところが、アニメをみてみると、絵はきれいなのに怖い。やはり、プロというものは、たいしたものだと、また感嘆しました。

話を戻します。人々は、三重の城壁の中に閉じこもっていて壁の外にはでません。唯一、調査兵団という兵団だけが壁外に遠征します。調査兵団は、遠征のたびに、巨人に襲われ団員に多くの犠牲者をだします。それでも、外の世界を調べたくて、遠征します。主人公のエレンも、人類が壁の中に閉じこもっているのに我慢がならず、外にでていきたくて調査兵団に興味をもっていました。そして、母親を巨人に食べられたので、調査兵団にはいり、「駆逐してやる、一匹残らず」と、復讐心にもえます。このマンガのファンの間では、学校や会社でいやなことがあったときに、この「駆逐してやる、一匹残らず」という台詞を、使ったりします。半沢直樹の「倍返し」みたいなものですね。

エレンの父親の知人の娘で、両親を失ったミカサは、エレンの家で兄妹のようにして育ちます。この準主役のヒロイン、ミカサは、口下手で表情に乏しくかわいげはないが、やたら戦闘能力が強い。おそらく「人類最強の兵士」といわれるリヴァイ兵士長に次ぐか同じくらいの戦闘能力の設定です。ジブリもそうですが、戦闘にとても強い女性が出てくるのは、ご時世でしょう。ミカサの名セリフは、「仕方ないでしょ?世界は残酷なんだから。」

そして、このミカサは、いまや唯一の家族と思っているエレンの身を守るために一緒に調査兵団にはいります。エレンへの過剰ともいえる庇護欲をあからさまに見せ、兵団の作戦や指揮命令も無視しかねません。このあたり、「つんでれ」的魅力を加えているといいましょうか。

エレンたちは、兵団に一緒にはいった同期と訓練を通じて心を通わせます。そうしたエピソードを重ねておきながら、この心を通わせた同期も巨人にあっさりと殺されたり、食べられたりします。このあたりの残酷さは、なかなか他のアニメではありません。

そして、話が進むにつれ、エレン自身も知らなかったのですが、エレンが巨人に化ける能力があることが分かります。そして調査兵団は、巨人になれるエレンと協力して、巨人に反攻しようとします。ところが、同期の一部が、実は巨人に化けることが分かります。心を通わせていた同期が、人類の裏切りものだったのです。エレンが苦悩しながら戦うようになります。そういう状況で、エレンの親友から、「何も捨てることができない人には、何も変えることはできないだろう」なんて名セリフがでてきます。

このアニメが、韓国や中国の人に人気だというのは、その独特の世界観が自分たちの現状を想起させるせいではないかと言われています。高い壁に囲まれた狭い場所に閉じこもっている閉塞感。壁の一歩外に出るとほとんど一瞬で残酷に殺される恐怖。それにも拘わらず、壁の中では、危機意識の欠けた安穏とした暮らしがあり、足の引っ張りあいだけの腐敗した政治がある。

日本の社会でも、普段は、単調なくらい安穏で閉塞感をもって暮らしていながら、ある一線を何かで超えて立ち入り禁止領域に入ってしまうと、とたんに社会的生命を失いかねない。そこでは、何を考えているかもよく理解できない人たちから社会的に撲殺される可能性もある。あるいは、外に出てグローバルな競争にさらされるとあっという間に職を失いかねない。だから、みんな冒険や創造的営為をしようとせず、訳知り顔の評論家のようなことをぶつぶつと言っていいながら、危機感無く惰性で生きている。そうなっていないでしょうか。

一匹残らず駆逐されるべきは、そういう自分たちかもしれません。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 8

なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック