サラリーマンのコツ 原発特別編

記者会見での説明をみて、「東電の幹部はなっとらん」と口汚くののしる人も多い。でもねえ、あの程度のボスにいちいちきれてるようじゃ、日本の下っ端サラリーマンを20年も続けられまへんで。日本のサラリーマンたるもの、あの程度のボスと、現場の危機的状況を所与の条件として、ベストの手を打ち続けなければならないのです。

東電を声高に批判するエライ人に限って、下の者からは、同じような人種に見えているものです。ここは、東電のエライさんをののしっていても、生産的ではありません。なんといっても、僕なんぞの下っ端サラリーマンは、東電のエライさんのような立場になることは、一生ありえないし、菅首相の地位になることも天地がひっくり返ってもないのですから。彼らへの批判を参考にしても、明日の自分の行動に役立たないでしょう。

実際、記者会見に出てくる方は、世間一般の日本の会社の管理職と比べて、それほどレベルが低いとも思いません。まあ、中の中くらいでしょうか。説明能力に少し欠けるかもしれませんが、理解力もあるようですし、あたりが柔らかく、居丈高で相手をおこらせるということもありません。一般的には、問題が起こって、上の人と一緒に説明にしていると、途中から、上の人が相手と一緒になって自分を責めだしたなんてことは、サラリーマンでは、よくあります。今回は、少なくとも社外の場で、担当者の責任にして逃げる態度をとっていないのは、認めてあげるべきです。一般の日本のサラリーマンは、もっとひどいボスに何度も仕えた経験があるのではないでしょうか。

では、ボス以外にも、こういう状況で、普通に、出てくるタイプをあげておきましょう。そうしたキャラクターが出てくるのを前提に、現場の下っ端サラリーマンは、事態に対処しなければいけないからです。

○ 味方に弾を撃つ臆病坊や
僕は、以前に「サリーマンのコツ2」(ココ)で次のように書いています。

撤退戦は、後方に注意
撤退戦をするときは、後方の味方に注意です。撤退戦のしんがり最前線をしていると、自分より安全な後ろにいるにもかかわらず、味方の前線部隊を攻撃してくる人がいます。位が上の人だったり、参謀本部系の人だったり。あれは、自分の責任にされるのが怖くなって、「おれのせいじゃない。おれのせいじゃない。」と言って、前にまだ味方がいるのに機関銃を乱射する臆病な戦士のようなものですね。撤退戦のさなかは、大忙しですが、それでも、三割は、味方の、特に臆病そうな後方の味方に注意を払って、「坊や、大丈夫だからね。」となだめつつ進めなければなりません。


菅首相が、東電に乗り込んで言って、どなりちらしたそうですね。また、海江田大臣が、東京消防庁の職員に「(放水)を速やかにしなければ処分するぞ」と発言したとも言われています。ことの真偽はともかく、上で書いているのは、まさしくそういう状況を言っています。

「おれのせいじゃない。おれのせいじゃない。」と言って、前にまだ味方がいるのに機関銃を乱射する臆病な戦士になってしまうのです。こういう危機的状況になると最前線の現場は、必ず味方から弾を打ち込まれます。繰り返しになりますが、三割は、味方の、特に臆病そうな後方の味方に注意を払って、「坊や、大丈夫だからね。」となだめつつ進めなければなりません。

○ 「てえへんだ!親分!」おじさん
記者会見で、おバカ質問をする記者などが、この「てへんだ!親分!」おじさんです。現場の作業の細かなミスや失言をみつけると鬼の首でもとったように、「てえへんだ!てえへんだ!親分!」といって、自分のボスに御注進、御注進とする人、どの世にも、どの組織にもいますよね。そもそも質問の目的が、状況を調べて明らかにするためではなく、非難するなんらかのネタを見つけ、自分のボスに報告して自分の得点をとるためだというのが明白な輩です。記者でいうと、国民のなんの役にもたたないのに、デスクに対して、「こういう失言を引き出した」とアピールすることを優先し、国民の役に立つ情報を正確に伝えることが後回しになっている人ですね。(もちろん、まともな記者もたくさんいます)

僕は、こういう人にでくわすと、心の中で、「てえへんだ親分おじさん」と呼んで、心の平衡を保つようにしています。本人は、そのプロジェクトが成功しても得点にならず、間違いや失言を引き出してボスに報告することによってのみ、自分の存在意義が示せる人です。状況についての基本的な知識もなく、また新しいものごとの理解力も乏しいことが多い。そして、ときには、自分が実行者でないことに、コンプレックスをもっていることもあります。ボスが、その案件に否定的か、肯定的かという風向きだけを敏感にみており、少しでも否定的だとみると、かさにかかって、現場側を攻撃してきます。

結構これがやっかいで、この手の三下の批判に、世論や、しっかりしているはずの責任者までもが、流されたりしてしまいます。また、少しでもこちらの方が分かっているようなそぶりを見せると、コンプレックスのとげに触れるのか、猛然と攻撃的になってきます。こういう人には、辞を低くし、丁寧に、間違ったことを言わないように、それでいて、「あなたより知っている」という態度が出ないように、対応しなければなりません。僕は、苦手ですねえ。

○ おめつけやく
検査やチェックを組織目的としたおめつけやく的組織がどこにでもあるものです。規制遵守を組織的に達成する責任を負っています。現場に対する強大な制裁権限を持っているので、普段、現場は、下にもおかぬ、殿様扱いで、へりくだって対応します。しかし、一旦、問題が起こると、自分ではなんにもできません。保安院などは、これにあたるのではないでしょうか。実際、今も、保安院の記者会見は、無意味に見えますね。東電側が、一生懸命、保安院が存在感を示すことができる舞台を作っているようにさえみえます。

今度の事故などは、保安院が強制している安全基準を守っていたにも係わらず、その基準の想定を越える地震と津波が来て、発生しました。ならば、東電というよりも、保安院が責任をとるべきではないかとも思ってしまいます。モラルとしては、ここで責任をとらないのなら、普段から、威張ってはいけません。世の中、リスクをとらない人は、威張ってはいけないのです。とはいえ、こういう組織が、どの大組織にもあるのが事実ですので、所与の前提として動かねばなりません。

どうでしょうか。学者、評論家など、いわゆる「先生」と呼ばれる方、社長さんや独立事業者の方などには、ちょっとぴんとこない視点かもしれません。全国何千万人のサラリーマンの日々の苦労の実態を、そろそろ飽きてきた記者会見の中にかいまみていただければと思います。

また、これから社会人になる学生さんには、ちと、夢のない話かもしれません。でもね、日本の現場には、あのようなボスと、てえへんだ親分おじさんと、おめつけやくとを軽々と御しつつ、転変する状況の中、不完全な情報に基づきながら、リスクをとって、的確な判断を下し、一致協力して進めていく現場の人が、たくさんいるのです。日本の社会は、先の戦争の頃から、こうしたしょうもない組織と、役に立たないエライ人と、現場のがんばりとで、進んできたんだろうと実感することができます。

なんて言っている僕も、組織に必ずいる厄介者の一人なのでしょう。

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この記事へのコメント

らくちん
2011年03月27日 10:25
なりひらさん、コメントありがとうございます。「保護色タイプ」うまい表現ですね。組織には、一定数「保護色タイプ」も必要なんですよね。そればかりでも回りませんが。
なりひら
2011年03月26日 00:19
残念ながら僕の会社のボードメンバーを見ても、東電のおえら方の対応は、中の上かと思います。あまり目立つパフォーマンスは不要で、保護色のようなタイプが秀逸なのです。書かれていることよくわかります。
それと、記者連中の半分はアホですね。マスコミという特権を盾に居丈高に迫るなど、総じて中身のない人間のすることです。マスコミは全然信を置いていません。
http://happy.ap.teacup.com/applet/ibaraki-doji/msgcate2/archive
らくちん
2011年03月23日 22:00
ゆうこりんさん、Naniwa no Nagoriさん、コメントありがとうございます。僕もえらそうなことをいいながら、このへんは、からきしだめで、いつも友人や、後輩にまでしかられております。はい。
Naniwa no Nagori
2011年03月23日 12:32
すいません、付け加えることを忘れました。ボスと、てえへんだ親分おじさんと、おめつけやくのいずれの扱いにも当方は結局熟達せず、落ちこぼれました。やんぬるかな、です。
Naniwa no Nagori
2011年03月23日 09:31
いや、あまりにも深い洞察に―いつものことながら-頭が下がります。今回の日本の対応を称賛する海外の方々に、英訳して紹介したいくらいです。それにしても日常生活の中では、よい日本人がいったん組織の中に入るとどうして、役に立たない上司になったり、ご注進専門職になるのか、まことに不思議です。お時間のある折にでも、ご教示ください。
ゆうこりん
2011年03月23日 03:42
この記事の内容をもし学生時代に理解できたら、自分の人生もさぞかし違っていたんじゃないかと思いますが、当時の自分にこれを理解できるだけの力があったかというと「ない」と言い切れるので、結局同じ人生だったのかなと思い至りました(涙)。

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