中国の二つの愛国心

中国を知る人が、いや、知る人ほど驚いている。四川地震について、中国政府と中国人の対応が、予想を超えて驚くほどちゃんとしている。中国に対して暖かくはあるが決して甘くはない中国ウォチャーの津上俊哉さんが、中国を知る人のそんな気持ちをうまく語っている。

津上さんのブログに、次の二つのエントリーがある。
四川地震遭難者への黙祷
四川地震遭難者への黙祷 (フォローアップ)

上のエントリーでは、中国通の日本人、さらに中国人ですら、驚いたこととして次のようなことを挙げている。
・当局が情報統制をせずに情報公開した。人民解放軍の代表が記者会見にでて、メディアの前で堂々と且つ、詳細に状況説明した。(こんなことは、想像もできないこと)
・全国から募金が約1200億円も集まった。
・全国で地震遭難者に対する黙祷が行われた。(中国では、前例がない。)
・装備面も含めて軍の災害派遣が実力を示した。(人民解放軍があんなにヘリコプターを持っているなんて、中国人もびっくり。)
・通信の復旧が移動通信を中心に迅速だった
・全国各地からの医療関係者派遣が迅速だった。

僕は、中国の一般の人が心から思っている愛国心に二つあると思ってきた。一つは、日本とのサッカーであばれたりした感情的なもの。江沢民の愛国教育の影響もあるだろうが、これは、熱しやすく醒めやすい扇情的なものだろう。もう一つの愛国心は、ビジネスのネゴなどをしていて感じる理性的合理的なもの。大国として一つにまとまっていることのメリットを冷徹に計算した上でのものだ。(ちなみに、上海での反日暴動の原因は、国内の政治的派閥争いが半分、感情的な愛国が半分だろう。)

鄧小平が亡くなるころ、中国は四分五裂になるのではないかという議論が日本でもあった。中国は、北京、上海、広州、東北地方、少数民族とそれぞれの地域が、見た目に人種も違うし、言葉も相互に通じないし、お互い結構悪口を言っていたものだ。しかし、当時、中国と厳しい交渉をしていた日本のビジネスマンは、そういう状況を重々承知の上で、かなりの数の人が、「いやいや、なかなか分裂しないぞ」と言っていた。彼らの交渉相手である中国人が、「ここで値段を下げないと10億人のマーケットに入れなくなりますよ。」という殺し文句が使えなくなる事態を、絶対防ぐと思ったからだ。

地震への今回の対応においては、この感情的な愛国心と、合理的な愛国心の両方のいい部分が上手く結びついて現れているように見える。

一方で、チベットの件と、それに引き続いて起こったオリンピックの聖火騒動については、この感情的な愛国心と、合理的な愛国心の両方の醜い部分が、現れてしまったように見える。チベットを看過すると今の中国の統一の維持に障害が出て、デメリットが大きいという冷徹で合理的な愛国心と、オリンピックで世界に対していい格好をしたいという素朴な感情的愛国心が結びついた。そして、結局は、残念ながら、世界の目からみて、なんとも不恰好なことになってしまった。

そういえば、今、思い出したのだが、河合隼雄が、阪神大震災とオウム事件の後、日本人について述べていた。神戸の震災における、忍耐強く秩序だって相互に助け合う住民の風景と、その2ヵ月後に起こったオウムの地下鉄サリン事件は、好対照な風景である。多くの外国人が、オウム事件と、神戸の震災後の住民達の隣人愛が同じ国で起こったこととは、思えないとコメントしている。しかし、この好対照の二つの風景の両方を生み出したことが、日本の社会の本質を語っているのではないかと。

その見方にならえば、チベット事件及びその後の聖火騒動への対応と、地震への対応は、海外の人からは、これも同じ国かと思うほど、なんともモラル的な美醜において対照的な風景であった。しかし、この二つの事件の両方を生み出すのが、中国の社会の本質を語っているのかもしれない。

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この記事へのコメント

らくちん
2008年06月18日 00:08
snowbeesさん、コメントありがとうございます。サンケイ新聞の記者のブログ、面白いですね!
snowbees
2008年06月13日 21:26
■国策は、円高誘導、エネルギー、食料である

資源輸入国である日本も、強い円が国益であることを認め、円高によって原材料や穀物の価格を下げ、企業もそれを前提に、エネルギーや農業分野に積極的に進出していく必要があることは間違いないだろう。

1) http://blog.livedoor.jp/marubiz/archives/51187377.html
2) http://www.investorsinsight.com/blogs/john_mauldins_outside_the_box/archive/2008/05/14/food-for-thought.aspx

snowbees 2008-06-13 07:46:43 [コメント記入欄を表示]
snowbees
2008年06月12日 07:42
<国際緊急援助考>
http://fukushimak.iza.ne.jp/blog/entry/586727/
サンケイ新聞の女性記者によるブログが面白くて、参考になる。(今回限り、アンチ・サンケイをお休みして)

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