台湾の「安全保障のための民主主義」

台湾総統選で最大野党国民党の馬英九氏が勝った。僕は、台湾を離れてから3年になり、選挙戦詳細を追いきれていないので、以前に書いたことの繰り返しも含めて、やや長いスパンでみた、台湾の政治に対する印象を書いてみたい。

まず、まずなんといっても立派に民主的な選挙をやり終えたことを祝福したい。僕は、2002年5月に、台湾にとって、「民主主義の維持が最大の安全保障である。」と書いた。(ココ)台湾は、民主主義であれば、アメリカが助けてくれる可能性が高いが、民主主義でなければ、アメリカが助けてくれない可能性が高く、安全を確保できないかもしれない。「民主主義をちゃんと回して見せ」ないと命が危ない。

普通の国では、自由と民主主義を守るために安全保障政策を吟味する「民主主義のための安全保障」だ。台湾の場合は、命を守る為に民主主義の維持が必須であり、「安全保障のための民主主義」である。今回の選挙では、まずは、民主主義を維持できた意義を再確認するべきだと思う。

次になんとも驚くのは、陳水扁氏と与党民進党のこの8年の人気の凋落振りである。政権2年目でも57%の支持率があったのにこの状態だ。陳水扁総統の8年の任期の間、市民の台湾意識がどんどん高まっていったにもかかわらず、それと反比例するように「台湾の子」陳水扁氏と民進党の支持率が下がった。

これは、「反体制エリートの挫折」ともいえるだろう。(ココ)陳水扁氏は、反体制野党のなかで、傑出してパフォーマンスが得意でイメージ選挙に強かった。ところが、総統になって日が経つ程に、イデオロギー的といえるほどまじめになってしまい、台湾人意識を強調して、パフォーマンスも減り、人気を失っていった。このあたり、野党ではあったが岡田元民主党党首を思い出す。

それに、そこは書生エリートの癖なのか、一番大切なことだけに注意を払い、二番目、三番目に大切なことにも適度な目配りができないので、現実政治で実績があがらなかった。

アメリカの支持を得るのには、一番大切な民主主義を守ることだけでなく、追加して、アメリカ議会へのロビー活動とか、自衛の努力とかも必要だ。それができずに、政権発足当初、かつてないほどに支持をしていたブッシュ政権が、陳政権を見放してしまった。また、外国では、一番大切なアメリカに加え、日本とかへの配慮も必要だった。にもかかわらず、当初の政権に、余りに知日派が少なかった。自分が汚職に巻き込まれないことが一番大切だとして細心の注意を払っていたが、家族が汚職に染まって人気を失った。

このあたり、万年野党体質が染み付いてきて、にもかかわらず、エリート臭ささと書生気質が消えない日本の民主党にとって、対岸の火事ではない。

さて、台湾政治の今後であるが、馬新総統本人にその意図がなくても、周辺の国民党員や外省人は、政権党の横暴を行いかねない。また、中国との取引を勝手に進めてしまうかもしれない。「台湾市民をだました。」と非難されれば、彼らは、言うであろう。「李登輝だって、外省人をだましたではないか。」馬氏にささやく輩がきっとでてくる。「中国の国家主席と握手をすれば、ノーベル平和賞ですぞ。」

一方で、国民党の方が、実務能力は、期待できそうだ。アメリカ議会へのロビー活動もきっちりやるだろうし、知日派の層も厚い。日本人としては、ますます重要になる台湾を、じっくり見続けることが必要だと思う。

最後に僕が昔作った話を紹介したい。(中台紛争1

ある人が日本の首相に尋ねた。
「中台で戦争が起こった場合、日本は中国を支持しますか。台湾を支持しますか。」
ときの日本の首相が答えた。
「アメリカを支持します。」

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この記事へのコメント

らくちん
2008年03月26日 21:10
Kさん、ベルリさん、コメントありがとうございます。Kさん、ABC(Anybody But Chen)が、一番強かったようですね。ベルリさん、本当に平和な政権交代と、民主主義の維持と発展を心から祈ります。そうすると、民主化を行おうとしているイラクの人達にも希望が与えられるように思えてなりません。
ペルリ
2008年03月26日 17:55
そうですね。何よりも誰の目にも公正な選挙が行われて、政権交代が平和になされること、これが大事なことなのだな、と思います。台湾の人たちがこの偉業をとげたことを心から祝福したいです。後は、新政権が、一日も早く安定して、言い方が悪いですが、「国際ニュースの材料」にならないことを望みたいと思います。
k@神奈川
2008年03月25日 00:24
知り合いの台湾人曰く
「国民党の馬が勝っても、民進党の謝が勝っても、陳水扁よりましだ」
こんなところが多くの台湾人の心境だったのでは。

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