「氷点」停刊の舞台裏

今年1月、中国の新聞「中国青年報」の折込の人気週刊コラム誌「氷点」が、当局から停刊処分となった事件がある。この事件は、言論統制として海外メディアの反響を呼び、中国内でも論争を巻き起こした。結局、「氷点」の正副編集主幹が解任となる一方で、当局の厳重な監視体制のもと、復刊した。この件を当事者の「氷点」前編集主幹、李大同氏が書いた「「氷点」停刊の舞台裏」を読んだ。(日本僑報社)

この本自体は、解任になった恨み節が前面にでることなく、極力客観的に事実を記録しようとする著者の意思が伝わってきて胸をうたれる。とはいえ、僕の読後の感想は、津上氏も述べているように(ココ)、「思いのほか、中国も自由なんだなあ」というものである。

「氷点」停刊について、日本の新聞で報じられる記事を斜め読みした普通の人は、最終的に、正副編集主幹を左遷しただけで復刊したところをみると、当局も動揺して、停刊はやりすぎと認めたのだと考える。ただ、少し中国と関係のあった人なら、最初からこのあたりの落としどころを目指して動いていた人がいたのではないかなどと、入り組んだ裏の真相に想像を巡らせてしまう。結局、この著書によると、たいした裏はなさそうで、普通に想像する背景どおりなのは、あっけないほどである。

さらに、李大同氏は、停刊が決まってからも、内外に抗議文を公開し、ネットに掲載する。おまけに、政府のOB幹部などが実名で当局の処分に抗議し、李大同を支持する声明を出している。こんな健全なジャーナリズムが中国で育っているのは、むしろ驚きである。日中関係を悪化させているとして、僕が「媚び殺し」と批判した日本の一部のジャーナリズムには、爪の垢でも煎じてもらいたいものだ。

それだけではない。李氏が繰り返し非難する中国当局の官僚主義は、日本の官僚のみならず民間企業にも広く共通してみられることである。彼は言う。-中国の官界では、役人は、「上部に対する責任」という唯一の義務を負う。その義務の為に、下部の人間は、上部の指示に二つの反応をする。一つは、面従腹背して、実質的に反応せず、報告をごまかす。もう一つは、上部の指示に反応しなければ自分の地位が脅かされると考えたとき、役人は、過剰に反応し5割でいいところを8割実行しようとする。-
こんなのは、日本の会社で全てのサラリーマンが毎日見ている風景である。

余談になるが、僕が台湾に駐在していた頃、プライベートで台湾に遊びにこられた官僚氏が、故宮博物館で秦の始皇帝宛の報告文書を見て、官僚主義っていうのは、古今東西変わらないという自説を再び強く確信しておられた。彼によると、官僚主義の行動様式こそ、良かれ悪しかれ、国や時代による違いのない共通のグローバルスタンダードなのだと。

余談ついでに言うと、この著書では、中央宣伝部「党内政治生活に関する若干の準則」第六章にある「三不主義」が紹介されている。「揚げ足を取らない。レッテルをはらない。迫害しない。」いやいや、これは、中国の共産主義政権だけでなく日本の官民全ての官僚的組織の上役にも守ってもらいたいものである。

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