ドッグイヤー

戌年の今年は、景気もよくなって、またぞろドットコムバブルのときのように、「ドッグイヤー」と「ビジネスモデル」を連呼して投資を迫るパワポにいちゃん(パワーポイントを使ってまくしたてるようにプレゼンテーションをする、実ビジネス経験の少ない人。らくちんの造語)が、跋扈するに違いない。しかし、目を凝らしてグーグルのような成功企業をみると、以前にも書いたように(ココ)、ビジネスモデル・モデルは、すでに崩壊しているし、成功の鍵は、一直線なスピードではなく、時間に対してどれだけ柔軟でいられるかのように思える。

現代のシリコンバレーのスターであるグーグルの設立と成長の経緯をみていると、新規ビジネスのプレゼンテーションでよく言われる「スピード」、「ビジネスモデル」、「トレンド」において、よくできていたといいがたい。

なんといっても改めて驚くのは、グーグルがどう稼ぐのかというビジネスモデルを確立しないまま、巨額の投資資金を獲得し会社の規模を拡大していったことである。検索サイトとしてネットの中で確固たる地位を気づいた後も、他のポータルサイトのように、バナー広告だらけのページにしないことにこだわったために、しばらくの間、収益モデルがみつからなかった。のんびりしたことである。

さすがに、投資家が痺れを切らしたころに、検索連動型広告が立ち上がり、巨額の収益をもたらすようになった。言い換えると、開始当時からのシンプルなページを維持する方法を探す時間を作ったのが勝因であった。そして結果的に、まれに見るスピードで企業価値を高めたのである。急ぐことよりも、待ったことが勝利につながったのは、皮肉なことである。

2005年1月に僕は、グーグルのことは念頭におかずに、次のように書いている。「これらの結果からみると、つまるところ、当初計画した「ビジネスモデル」がいかに立派で精緻であるかということと、ビジネスに成功する確率は、それほど関係はなかったのである。」グーグルもこの仮説の例に数えることができるだろう。

また、起業当時には、サーチというのは、トレンドから外れているように考えられていた。「当時のヤフーCEOティム・クーグルは、アナリスト向け会合で、検索によるトラフィックは、「衰えつつある」と得意気に語った。」(「ザ・サーチ」)という。ヤフーに限らず、これは、業界に共通するトレンド感だった思う。「2003年にルイ・モニエは、彼の生んだアルタビスタの衰退期を思い出しながら、検索は「もう充分だ」と軽蔑をこめて言っていた。」(同書)という。「これが今のインターネットのトレンドです。」とパワポにいちゃんが迫ってきて閉口したときは、この言葉を思い出すべきだろう。

さらに、ここで気づかされるのは、実は、アメリカのヴェンチャー育成システムの懐の深さである。グーグルの成長過程をみると、スピードそのものを絶対的な価値としてみるよりも、時間に対して柔軟であった点が、成功要因だったようにみえる。

インターネットの前のシステム構築の仕事に関わっていたときに思ったのだが、システムに詳しくない人ほど、「即時にオンラインでデータをだせるシステム」を要求するものである。それをシステム・エンジニアは、苦々しい思いで聞いている。一日後にだすのと即時に出すのでは、システムの負担が10倍以上違う。そして、それを要求している本人が、即時に出される売上結果を3時間おきにみて経営判断を変えているようには、見えない。大切なのは、スピードよりも、適切なタイミングで情報をだすことだと痛感したものだ。

その後、ソフトウェアの技術者と電子メールの意味について議論したことがある。すぐに情報を伝えるためなら電子メールよりも、電話の方が優れている。電子メールが、電話よりも優れているのは、情報の受け手に時間ができたときにゆっくり読めることである。つまり、電子メールの価値は、スピードではなく、時間に対して柔軟に対応できる点にある。

時間に対して柔軟であるということは、変わるものと同じくらい変わらぬものへ目配りをすることを忘れないことだと思う。スピード、スピードと連呼するよりも、長い間変わらないものをしっかり見つめることも大切だと思わざるを得ない。

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