株主資本主義の矛盾

昨年上場したGoogleは、現代のヴェンチャー企業のスターであり、シリコンバレー社会の申し子であり、その意味で、株主資本主義を徹底するアメリカ型資本主義の最先端である。そのGoogleが実は、株主資本主義の矛盾を、あからさまに語っている。

会社としてのGoogleについて書いた「ザ・サーチ」(ジョン・バッテル)によると、創業者のラリー・ペイジとサーゲイ・ブリンは、ずっとGoogleの株式の公開に消極的だったという。他のシリコンバレーの成功企業のように創業者がプロの経営者に経営を委ねて、半ば隠居したりせず、自分達が自分達のやりかたで経営を続けたくて、他の投資家につべこべいわれたくなかったのである。

しかし、会社の規模がある一定以上になると、様々な規制によって、いろんな意味で公開せざるを得ないようになっており、公開を決意する。そこで、株式公開にあたって証券取引所に提出した申請書のなかで、ラリー・ペイジから株主宛の手紙で自分たちの意思を明確に表明する。創業者が引き続き出資比率以上の権限をもって経営を支配すること。分権的な企業統治もとらないこと。ウォールストリートに収益説明もしないこと。当たり前だが、これは、伝統的な株式市場関係者を激怒させた。

近年、日本の企業経営者が耳にたこができるほど説教されてきた、資本と経営の分離、近代的な分権的で組織だった企業統治、株主とのコミュニケーションなど、「グローバリズム」と称するアメリカ型資本主義の原則を、グーグルの経営者は、真っ向から否定したのである。ジョン・バッテルによると、「要約すると、グーグルは、ウォールストリートを馬鹿にしていた。」となる。

日本でも、非公開の優良企業のオーナー社長に対し、多くの株式市場関係者は説得を始める。「ここまで大きな規模の会社となると、会社は、社長だけのものではなく、公のものにすべきです。」しかし、株主が一番大事だというのなら、その最大の株主であるオーナーが一番大事であって、その株主の意に沿うように経営するのがいいのではないだろうか。公開にもっていくときには、株主であるオーナー社長に、株主の権利よりも社会性や公共性を強調しておきながら、いったん公開すると今度は、「株主を大切にして意見を聞け」というのは、矛盾している。公開前の株主は軽視し、公開後は株主を大切にしろというのなら、それは要するに、プロの投資家が「常に自分たちのいうことを聞け」と言っているに過ぎないようにみえる。

あるとき、非公開企業の社長さんで、アメリカ型の経営手法もよく通じておられる方が、「会社にとって最も重要なステークホルダーは、従業員だ。それは、明白だ。」と断言されたことがある。その意見にそのまま賛成するかどうかはともかく、顧客重視など、様々な批判があるのを重々承知の上で、きっぱりと断言されるその姿勢には、感服したものである。少なくともこういう会社は、なかなか傾かないに違いない。

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この記事へのコメント

らくちん
2006年01月10日 21:36
そうですねえ。株主の論理を振りかざしてがなりたてているのは、やはり、はしたないですよねえ。ルールの沿っているかどうかはともかく、美しくないのは確かです。
none
2006年01月09日 22:31
賛成です。

他人の褌で相撲をとるマネーゲームはもうたくさん。
実質的に会社は会社員のものという見方はとても
健全だと思う。

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