「厚み」戦略

囲碁の戦略に「厚み」という概念があります。これが、僕のような初心者には、とても分かりにくく、にもかかわらず、理解しないと上達できない重要な考え方です。しかも、この「厚み」戦略は、一般の社会・世間においても我々が忘れがちな重要な発想だと思えます。

囲碁は、自分の石で囲い込んだ「地」の面積の大きさを競うゲームです。「地」を増やすには、戦闘で相手の石を殺すのも有力な方法です。ただ、相手の石を殺すことに熱中して、大局をみていないと、相手よりたくさん石をとったけれども、「地」の大きさが少なくて、勝負に負けるようなこともよくあります。このように、囲碁は、戦闘に勝って勝負に負けるといったことの多いゲームで、その意味で戦略的なゲームという人も多いようです。

その囲碁の戦略で、「厚み」というのは、序盤から中盤にかけての頃、盤面の中央に面して、切れ目なく繋がっている壁のような石をさします。「厚み」に対応する言葉は、「地」や「実利」でして、定石などでは、黒の「厚み」と白の「実利」の分かれなどと結論付けられたりします。

「厚み」は長期的利益、「実利」は短期的利益との説明もあります。しかし、そういいながら、碁の格言でも「厚みを囲うな」と言われており、地にもなかなかなりにくく、それなら、長期的にも結局、利益にならんではないかと思ってしまいます。それでは、「厚み」をいかして相手を攻めて殺してやれと思うのですが、先日、テレビの囲碁の解説を見ていると、プロの先生が、「厚みで相手の石を殺すのは難しい」と教えておられました。確かに狭いほうに囲い込んでいるのではなく、広いほうに面して並んでいるので、相手の石を囲いこんで殺すのはなかなか難しい。地にもしにくく、相手の石も殺しにくい。それでも、「厚み」が大切だというのが、僕のような初心者に理解の難しいところです。

「厚み」が分かりにくいのは、具体的にどういう経路でメリットを生み出すのか、短期はもちろん、長期的にもよく分からないにもかかわらず今、投資をしなければならないとすることです。チェスや将棋のソフトウェアに比べて、囲碁のソフトは、極端に弱いのですが、実際、コンピューター囲碁のプログラムでは、「厚み」の使い方と効果の評価が最も難しいようです。

サーチで調べてみると音楽家の方が囲碁の厚みを説明しておられます。(ココ
初心者がアイネクライネ・ナハトムジークを弾こうと考えた時に、旋律を一つ一つ練習していくのが「実利」、音階/ハイポジションを練習し、指が早く回るように重音の練習をして、それが出来てから、弾こうと考えるのが「厚み」。

上手な方の碁をみていると、厚みを築いた後、その後の状況変化により、攻めたり、地に囲ったり対応を融通無碍に変えています。もう少し細かくいうと、実際には殺してしまわないものの相手の石を脅すように攻めることによって他の場所に地をつくったり、隣の地域で戦闘を起こしそこが引き分けならこの厚みが地になりますというような、進め方をします。

将来の状況により、様々な使い方があり、しかもそれを今確定しないでおくのが厚みです。つまり、「厚み」が分かりにくいのは、その不確定性故ですが、「厚み」が大切なのも、その不確定性故なのです。そして、大切なのは、その「厚み」をどう活かすかというその後の作戦です。その意味で、「厚み」は、どう築くかと同じくらい、どう使うかが重要だとも言えます。

こういう理解のもとで、次回は、囲碁以外の分野での「厚み」戦略を考えて見ます。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 1

なるほど(納得、参考になった、ヘー)

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック

  • チンイツ戦略とメンタンピン戦略

    Excerpt: 不況になってくると、どこの企業でも、選択と集中とか戦略とかの名のもとに事業分野を絞りこみ、様々な将来の可能性の芽を消してしまう。これは、マージャンの初心者がよくやる、チンイツ、ホンイツばかりを狙う「チ.. Weblog: らくちんのつれづれ暮らし racked: 2009-02-22 21:00