Web2.0 J (3)

日本でのWeb2.0について、これまで二回、説明してきた。((1)(2))前回では、ビジネス面での説明が多かったが、今回は、技術面を、インターネットの世界で最近話題になっている技術と、インターネットビジネスに限らずシステムとかソフトウェアのとかの領域で起こっている変化とについて説明したい。言い換えると、前回までは、大部分のユーザーにとって近い過去に起こったことだが、今回は、これからの近い未来に起こることをかなり示している。

D) 技術面からみて ―システムの世界での傾向―
まずはじめに、少し退屈かもしれないけれども、インターネットに限らず、企業向けシステム開発の場面でも、共通しておこっている技術的な傾向を書いておきたい。これは、インターネットビジネスの明日をイメージするときに、比較的長期的なトレンドをみせてくれるからである。

① オープン化・コンポーネント化
オフィス用のシステムなどでも、オープン化・コンポーネント化の傾向がますます強まっている。オープン化というのは、システムの設計図にあたるソースコードを無償で公開して、誰でも自由に改良・配布できるソフトウェアが増えていることである。OSのLinuxが代表例で、Linux上で動く多くのアプリケーションソフトも、多くはオープン化されている。今では、オープンソースのネット通販システム(例えば、osCommerce)もあり、Linux と組み合わせて、非常に安いコストでEC(電子商取引)サイトのシステムが構築できる。

また、コンポーネント化というのは、ソフトウェアを標準的な部品として開発し、その部品を組み合わせることで大規模なシステムを開発する手法が一般的になっていることである。システムの世界でよく使われる「オブジェクト指向」というのも、コンポーネント化に大きく影響している。コンポーネントとして流布されると、競争もあって、コンポーネント自体もタダもしくは安くなるし、それを組み合わせて開発するのも容易で、低投資でできることになる。

しかし、このようなオープン化したソフトウェアと一般的なコンポーネントを使ってシステムを作ると、安価で開発できるものの、互いに技術的な差別化ができなくなってきている。この傾向は、システム開発の分野でもインターネット分野でも共通して起こっている。

② Web化
企業内システムなどでも、インターネットエクスプローラーなどのWebブラウサで起動するものが益々多くなっている。企業内システムでWebアプリケーションを使うことのメリットは、クライアント側のマシンを選ばないこと、クライアントPCが増加しても新たなソフトをインストールしなくていいので、ソフトウェア費用がかからないこと、メンテナンスもサーバー側だけ修正すればいいので容易なことなどが挙げられる。こうして、企業のシステム構築においてWeb上のシステム開発の道具、部品、経験が蓄積されてきており、それがまた、インターネットの世界にも反映されることになる。

③ マルチプラットフォーム(PC、携帯など)
一つのシステムをパソコンだけでなく、携帯電話(モバイル)などの他のプラットフォームで使えるように作ることが多くなっている。スケジュールなどを管理するグループウェアでは、日本の企業ユーザーから高い支持を受けているサイボウズの”Ofiice”は、モバイルに対応していることで大きく販売を伸ばした。これは、インターネットでも同様で、特に日本の場合、モバイル対応を常に意識せざるを得ない。

E)Webの世界での技術面の変化
① RSS (RDF Site Summery 又は、Rich Site Summary)
RSSは、サイトの更新時刻、見出しなどの概要を記述するための形式で、ほぼすべてのBlogが対応している。RSSは、実際には、XMLに基づいて記述されており、サイトを記述するときに使うタグの使い方を規格化したもので、おおざっぱにいえば、形式を決めた非常に小さいホームページのようなものだ。RSSによって、他のユーザーに更新情報を伝えることができるだけでなく、RSS広告などの新たな手法を生み出すことができると期待されている。

Blogの説明でも書いたが、RSSの特徴は、Blogの制作者が、特に意識することなく、自分のアップした記事を構造的な情報にしており、受け取る方がプログラムで処理しやすいかたちにしていることである。この一般ユーザーからの上り情報の構造化という傾向が続くとすると、今後は、RSSに限らず、マイクロフォーマットなどのタグの規格化と利用が進んでいくのではないだろうか。

③ AJAX
今プログラマーの間で「これからは、AJAXの時代だ」などといわれ始めている。AJAXが使われている「Google マップ」 では、マウスを使ってある地点をドラッグすると、地図が連続的にグリグリと動く。これと同じ事を「Yahoo!地図情報」 でやろうとすると、中心の地点を動かすたびに、画面が書き換えられる(フラッシュする)ので、連続して動かせない。「それがどうした?」と、思わないでもないが、これが結構、軽快で表現力のある(リッチな)ウェブを作る上で、応用範囲の広い技術と考えられている。

AJAXは、XMLとJAVAscriptという昔から(といっても10年もたっていないけれども)ある「枯れた」技術を組み合わせて軽快なアプリケーションを作ったのでみんなあっと驚いた。以前に書いたが、既存の技術の組み合わせで新しい使い勝手を実現したウォークマンのような技術的驚きがあった。ウォークマンのたとえでは、必要最小限の情報だけをユーザーの手許において軽快に楽しむという点でも、AJAXに共通していると思う。

ここでは、技術的にもう少し正確な説明をひいておく。”Life is beautiful”というblogによると、AJAXの本質は、次の6つだという。

(1)アプリケーションの明示的なインストールが必要ない。
(2)サーバーとの通信を非同期に実行することにより、通信遅延によりUIをブロックしない。
(3)サーバーとのやり取りは、RPCではなく、メッセージで行う。
(4)データ・バインディングはサーバー側ではなく、クライアント側で行う。
(5)UIにインテリジェンスがあり、ある程度はサーバーに戻らずにユーザーとやり取りをする。

AJAXは、XMLとJAVAScript との組み合わせの技術という意味でAJAXと呼ばれているが、こうしてみると、本質的には、「非同期メッセージ型ウェブ・アプリケーション」だという。(話はそれるが、このblogの説明は、本当に分かっている人は、素人にも分かりやすく説明できる見本のようで、感心させられる。)名をどう呼ぶにしろ、この「非同期」または、「メッセージ型」を使ったウェブアプリケーションは、今後も話題になるだろう。

③ デ-タウェア 
従来、革新的なインターネット企業は、革新的なソフトウェア技術が売り物だったが、今後は、どのようなデータウェアをもつかが、鍵になっていくと思われる。ユーザー参加型のオンライン百科事典のウィキペディアWikipediaは、複数のユーザーが簡単に共同作業を行うWiki技術を使っている。このような集合知的アプローチは、今後も益々重要になるだろう。

ただ、注意しなければならないのは、データの量が多いことをどんなに威張ってもダメで、
i)どのような切り口でデータを集め、
ii)どのように表現し
iii)どのようにお金に変えるか
が重要となる。昔、スーパーやコンビニのPOSデータが、消費者行動を完璧につかむデータであるかのように言われた時代があったが、分析の切り口が進化せず、期待した程の効果がなかったことが思い起こされる。

Googleの場合、データを集める切り口として、インターネット上に無数にあるサイトのリンクの構造を解析した点が画期的だった。さらに、表現方法としては、そのデータから得られた結果を、サーチしたサイトの表示する順序決めに使った。人気のあるサイト、信頼されているサイトの順に表示できるようにした。この時点でプロトタイプを見たヴェンチャー投資家が、即座に小切手を切ったという。最終的に、お金に変える方法としては、そのサーチで得られたユーザーの支持と技術を使って、検索連動型の広告(リスティング広告)を始め、世に定着させた。

もう一つ注意しなければならないのは、今後重要になるのは、一般消費者が能動的に動いた跡をどうデータベース化し分析するかだろう。Googleは、リンクの張り方やアクセスの仕方という無数の個人サイト管理者や消費者の能動的な動きのデータを分析している。アマゾンの場合、他のオンライン書籍ショップが後からなかなか追いつかないのは、どの出版社からどの本がでているかというデータベースではない。アマゾンが蓄積してきた、ユーザーが投稿している書評のデータベースにこそ価値が有り、競合他社が一朝一夕に追いつけないものだろう。このようなデータウェアが、今後の技術とビジネスの鍵になると思われる。こうしてみると、なんといっても、Googleの成功の歴史は、これからのインターネットビジネスの成功の鍵をよく示していると思う。
次回に続く)

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