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help RSS 「ボナンザvs.勝負脳」保木邦人・渡辺明

<<   作成日時 : 2007/08/28 22:45   >>

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初めて将棋ソフトとプロの棋士が、平手で勝負をした。その最強と言われる将棋ソフト・ボナンザの開発者と、対戦した渡辺竜王の共著。将棋について、というよりも、「科学する姿勢」というものを教えられる本。

ボナンザは、他のあまたある将棋ソフトと比べて極めてユニークだ。開発者の保木氏は、将棋が弱く、自称「11級」。町の道場で、捜してもみかけないほどの弱さだろう。この対戦の状況をNHKのBSで見たけれども、保木氏が、奨励会の人に、対局中に、真剣な顔で、「ボナンザが勝っているのですか?負けているのですか?」と聞く姿が、なんともほほえましかった。戦況の判断すらつかない人が開発したソフトなのだ。

科学者である保木氏は、コンピューター科学の題材として、将棋を取り上げたとしている。綿密にチェスの論文を調べ上げ、他の将棋ソフトが採用しない「全幅検索」の可能性を感じ、挑戦した。他の将棋ソフトは、定跡などを参考に、可能性のある指し手を限定して読む「部分検索」。これに対して、ボナンザは、可能性のある全ての指し手を読む全幅検索。そして、ボナンザは、歴史のある将棋ソフト界に、彗星のごとく登場して席巻した。これは、将棋指しの中では、ユニークだったが、保木氏にとっては、科学者として当然の道、王道を行くアプローチだった。

この本の中で、真面目な研究者らしく実に謙虚な保木氏が、珍しくややむきになって強調している点がある。保木氏の将棋の実力が弱いから全幅検索を取らざるを得なかったと理解しないで欲しい。ソフト開発者の将棋に関する知識によって、アルゴリズムを調整する「部分検索」では、いつまでたっても、人間に勝てないのではないか。だから、全幅検索にしている。と、いうことだ。

このあたり、凛とした「科学する姿勢」というものを感じさせる。一時的、部分的成果を狙って、中途半端な折衷的方法論をとると、得られる科学的成果が小さく縮こまってしまう。それよりも、時間がかかったり、ポカがあっても、シンプルだけれども射程の大きそうな方法、即ち、のびしろのある方法にこだわり続ける。できるだけシンプルな方法論で解決しようとするところは、科学者としての業を感じるほどである。

渡辺竜王も、プロの勝負師として、真剣に相手をしているのが、またいい。自分への逃げ道を作るためにも、余興ですから手を抜いてきましたなんて態度を取る人もいそうな企画である。それにも係わらず、渡辺竜王は、事前に入念な準備とボナンザの棋譜の研究をして、対局している。これでこそ、プロ。ゼニの取れる対局である。

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